Jean-Baptiste FONLUPT

那須田務 Tsutomu Nasuda
推薦
楽しいアルバムである。 ストラヴィンスキーの「〈ペ トルーシュカ〉からの3楽章」、プロコフィエフの〈ロメオと ジュリエット〉 抜粋、ラヴェルの〈ラ・ヴァルス〉〈高雅にし て感傷的なワルツ〉を収録したバレエ音楽に焦点を絞ったアル バム。フランス出身のジャン=バティスト・フォンリュプトは 現在40歳代半ば。パリ国立高等音楽院でリグットやブルーデル マッハーに師事し、その後ロシアのヴィルサラーゼ、ベルリン のエントレスの下で研鑽を積んだ。これまでにショパンとシュ ーマン、C・P・E・バッハ等のアルバムをリリースしていて音楽的教養の幅広さを示している。「〈ペトルーシュカ〉からの 3楽章」の冒頭、平行和音の連打からスピードの速いタッチで 鮮烈。第2楽章は傷ついたペトルーシュカの動きが目前に浮かぶようだ。終楽章も音離れの良いタッチで眩いばかりにカラフルな色彩と躍動感に溢れる。〈ラ・ヴァルス〉も「渦巻く雲が 次第に晴れていってワルツを踊る男女の姿が微かに現われる」(ラヴェル) 様子が見事なピアニズムで表現されていて、一人 で弾いていることを忘れさせるほど。テクスチュアの透明度も高い。プロコフィエフも楽しい。〈少女ジュリエット〉は高いテンションと快速テンポで聴いているだけで心が浮き立ってくる。様々な情感の変化がしっかり捉えられていてどれもが新鮮。〈高雅にして感傷的なワルツ〉も同様で表情豊か。それぞれのワルツの性格がしっかりと示されている。今月の筆者のベスト5の1枚。

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