Jean-Baptiste FONLUPT

草野次郎 Jiro Kusano
推薦
ここで弾かれるバレエ音楽集は、フォンリュプトがオーケストラ版やピアノ版を加味したピアノ・ソロ版として演奏している。ストラヴィンスキーの「〈ペトルーシュカ〉からの3楽章」から華々しくスタートする。フォンリュプトの実に歯切 れの良いタッチと多彩な音色が散りばめられて、濁りのない鮮やかな響きで楽音が空間に飛び散っていく。バレエ音楽として軽快なステップとスピード感をつくり出して、彼の高度なテクニックが随所に繰り広げられている。終曲の〈謝肉祭〉まで、音 符の隅々まで明晰に弾き出されて、曲全体の輪郭が鮮やかに描き出されている。ラヴェルの〈ラ・ヴァルス〉はピアノからオー ケストラ的な響きの渦や豊穣な色彩を集合させて、ワルツの本体へと徐々に茫漠とした響きの波が生み出されていく。そのプ ロセスは不鮮明ではなく、細部の各音型の緻密なタッチやペダリングの妙味から、テンポ変化や各フレーズの抑揚の描き分けの効果なども含めて実に明瞭で、オーケストラ版とはまた別の魅力をこの曲から引き出している。プロコフィエフの〈ロメオとジュリエット〉から4つの場面が設定されているが、冒頭の少女ジュリエットの可憐で明るいパッセージの流れや、終曲の別れの場面の部分ではこの二人の主役の孤独感や寂寥感を表現し、原曲とはまた一味違う雰囲気を感じさせている。 最後のラヴェルの《高雅にして感傷的なワルツ》は決してエキセントリックにはならず、エレガントでナイーヴな側面を全面に出している。。


Share by: